2022年F1の「タイヤが18インチになる」とレースは一体どう変化するのか?

タイヤ

今季2022年のF1は特別ですね。

それはクルマのレギュレーションが大きく変更になったシーズンなので。

ルール変更の度合いが大きければ大きいほどチーム序列に大きな変化が起こる可能性が高いので
これまでにない展開が期待できます。
(メルセデスファンの方には面白くないでしょうが。。。)

そして最も大きな変化として話題の中心にいるのがグランドエフェクトF1カーの復活。
そしてそれに伴うポーパシングでしょう。

既に行われた2回のプレシーズンテストでも持ちきりの話題だったポーパシング。

開幕戦バーレーンGPでは、メルセデスをはじめいくつかのチームがこの上下動に悩まされ続けていました。ポーパシングを抑えることができたチームが予選でも決勝でも上位につけることができました。

そして、ポーパシングほどの話題にはなっていませんでしたが、
タイヤの18インチ化もマシン序列に関する影響度は大きかったようです。

しかしシーズン開始前、有識者の方たちの間やwebサイト、雑誌等で
このタイヤに関するルール変更は、実は影響が大きくなるのではないかと言われていました。

タイヤのインチが大きくなるという変更が、実際どういった影響を及ぼすのか。
ここで説明したいと思います。

タイヤが18インチになる というのはどういうことなのか?

まず大事なことを確認しておきます。

「タイヤが18インチになる」の真の意味をご存知でしょうか。

これは『タイヤホイールの外径(直径)が18インチになる』というのが正確な意味となります。

市販車をドレスアップしたことがある方にとっては常識かもしれませんが、
スポーツとしてのF1が好きな方は分からないかもしれません。
(私も初めて知りました)

左が13インチホイール。右が18インチホイール。 ©️Pirelli

左が昨年まで使用していた13インチホイール、右が18インチホイールです。
並べると違いがよく分かります。

なぜF1はタイヤサイズを変更するのか?

F1は、何故今シーズン大きいタイヤ(ホイール)に変更するのでしょうか?

現代では、スポーツカーでは18インチホイールを装着しているのが当たり前。
市販車が18インチを装着していることも珍しくありません。

軽自動車も純正仕様で16インチのタイヤホイールを着けているという場合もあります。

大きいホイールは車好きの若者を惹きつけている魅力の一つであることは間違いないようです。

そういう事情があるので、自動車メーカーやタイヤメーカーは本業で新しい顧客を獲得するために、
レースカーのホイールサイズは市販車と同じサイズのほうが良いプロモーションになります。

逆にいえば、市販車と同じホイールサイズを使用しているレースカテゴリーだから参加する
ということです。(もちろんその理由のみで参加することはありませんが。。。)

F1としても参加するメーカーは多い方が良いため、このような時代の趨勢から
18インチタイヤへの変更を虎視眈々と狙っていました。

そして、2022年の車体レギュレーションが大幅に変更する機会に乗じて実行したのです。

これまで長きに渡って使用してきた13インチタイヤに何か特別な問題があったわけではないのです。

ホイールが大きくなることで何が変わるのか?

ではホイール径、いわゆるホイールの直径が大きくなることで、何がどうなるのでしょうか。

何もないはずありません。

直接的には、重量が増します。
大きくなった分だけ純粋に重くなるということです。

タイヤの重量が増すと、ブレーキング時にかかる重さも増すためタイヤがロックしやすくなります。

開幕戦バーレーンGPの1コーナーでも実に多くのマシンがタイヤロックしていました。
長い直線の後のヘヴィーブレーキングが今後の見どころの一つになるかもしれません。

またタイヤの重さはタイヤ交換に影響するかもしれません。
ピットクルーは実際リアタイヤの重さはかなりのものだと言っていたそうです。

実はタイヤも少し大きくなっている

変化はホイールだけではありませんでした。
実はタイヤも少しだけ外径が大きくなっています。

ホイールが大きくなったのにタイヤの外径がこれまでと同じだとすると、
大きくなったホイールとの差し引きでタイヤに充填される空気の体積が少なくなってしまいます。

空気量が少ないと安全率を確保できない というのがタイヤも大きくしている理由です。

F1マシン同士の争いを増やすという2022年のレギュレーション変更の目的を考えると、
タイヤ径を大きくすることはその目的達成に貢献してくれることになりそうです。

それはチーム間の差を埋めてくれることに繋がるためです。

これまでの13インチタイヤはサイドウォールが長く、多くの空気量が充填されていました。


F1のダウンフォースは非常に強力なので、タイヤが変形しています。

高ダウンフォース下ではタイヤがたわみ、車高が低くなり、
ダウンフォースが低ければタイヤは変形せず、車高はそのまま。

コースを何周もするとなるとこの現象が繰り返し起こることになりますが、
これはF1マシンで速く走るためにはあまりよろしくない状況です。

F1マシンにおける車高の変化というのは、ほんの僅か、それが数ミリ単位であっても
性能を大きく左右するのです。

18インチタイヤは、タイヤの外径が大きくなったとは言え、タイヤウォールの高さは13インチタイヤに比べて短くなっています。そして空気量も13インチタイヤより少なくなっています。

そのためダウンフォースやコーナリング時の荷重による変形が抑えられます。

変形が少ないということは、車高変動を抑えられるので、
車高変動によるセッティングの難しさを緩和してくれることになります。

タイヤのたわみは、風洞やコンピューターシミュレーションを駆使して分析を行うのですが、
かなりの予算が必要になります。資金が潤沢なトップチームと下位チームにおける分析力には大きな違いがあるようで、チームのマシンの出来を左右します。

18インチ化でタイヤの変形が抑えられれば、予算におけるチーム間の差は軽減されていくはずです。

デメリットには目をつむることができそうです

逆に、タイヤ径が大きくなることによるデメリットはあるのでしょうか。

  • タイヤのたわみがなくなることで、サスペンションとしての役割を果たさなくなる。
  • コーナーでの踏ん張りが効かなくなりコーナーリングスピードが落ちる。
  • タイヤ径が大きくなることで前方投影面積が大きくなり空力に悪影響を及ぼす。

このようなことが挙げられているようですが、
これらはマシンの性能そのものに対するマイナス要因にはなり得ますが、
どのチームにとっても同じ条件なので、争いを妨げる要因にはならないと考えられます。

気にしなくて良いでしょう。

ドライバーからの声

F1に先駆けてF2では2019年シーズンから18インチタイヤが導入されました。

導入前のテストでのドライバーからの声がこちらです。

「思っていたほど違和感はないが、ブレーキングではロックしやすく、加速ではトラクションがかかりにくくなった」

ブレーキング時のロックについてはタイヤの剛性が高まり動きがよりシビアになったこと、
トラクションに関してはサイドウォールのたわみが減ったことが原因ではないかと推測されていました。

また2021年8月、アストンマーチンのセバスチャン・ベッテルが
18インチタイヤのテストを行った時のコメントがこちら。

「これらのタイヤはオーバーヒートすることなく、限界でより長く運転することができる」

「低・中速のコーナーでより多くのグリップを提供する。それらのセクションでは、従来のタイヤよりも速く感じた」

近年のF1はタイヤ性能を劣化させないためにガマンの走りが必要なレースが多いので
前者は特に注目したい点です。

一方でこういうコメントもあったようです。

「大きなホイールは正面の視界をさらに悪化させる」

「(タイヤ)カバーと大きなホイールで縁石はまったく見えない」

実際開幕戦のバーレーンGPでも視界の悪さについてはここかしこでコメントされていました。

フェラーリのシャルル・ルクレールがスターティンググリッドにつく際に
マシンを停止させるイエローラインが見えないからペナルティのリスクを犯さずに少しラインの手前に停めると無線で言っていたことが視界の悪さを物語っています。

ここ数年、トラックリミット制限が厳しくなっているため、
この視界の悪さが余計なペナルティを生み出すことにならないことを祈るばかり。

まとめ 18インチタイヤへの変更

18インチに変更されるF1タイヤのことについて説明してきました。

  • 導入の背景は時代の趨勢に従って。
  • タイヤの重量が増すのでブレーキングが難しくなっている。
  • ピットストップクルーも体力作りが必要。
  • タイヤのたわみによる車高変動がなくなって、チーム差が緩和される。
  • 視界が悪くなる以外のデメリットは、観戦においてはあまり気にしなくても良さそう。

という内容でした。

個人的には、コーナーへの突っ込みがより見どころだという点は非常に嬉しいです。

しかし、開幕戦を見る限りタイヤ性能の持ちは持ちは一層悪くなっているようにも思えたので
ピレリにはF1をより魅力的なスポーツにするために、まだまだ頑張ってもらいたいところです。

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