※「RACERS」 2022年5月6日(金)の記事より
元F1ドライバーを父に持ち、幼い頃からレース界で注目されてきた1人の日本人少女。
その少女が2022年5月に開催されるWシリーズ開幕戦デビューで
レーシングドライバーとしての重要なステップを踏み出そうとしています。
Wシリーズ史上最年少のドライバー、Jujuこと野田樹潤についてご紹介します。

元F1ドライバーの娘は早くから注目を集めていた
2022年Wシリーズのスターティンググリッドにはシリーズ史上最年少のドライバー
Jujuこと野田樹潤(16歳)の名前が並びます。
開幕戦マイアミグランプリで女性だけのフォーミュラ選手権であるWシリーズにデビューするのです。
F1、インディカー、SuperGTレーサーだった野田英樹の娘であるJujuは9歳のときからレースの世界で注目を集め始めました。
同年代の子供たちがカートの第一歩を踏み出した頃にJujuはF4マシンに乗り込みました。
そして13歳でF3マシンをテストすることになったのです。
F4デビューはPPからの優勝
レースにデビューしたのは2019年。
アメリカを拠点とするルーカスオイル・ウィンターレースシリーズに3戦出場しました
その後デンマークに渡り、F4で初じめてのフルシーズンを過ごすことになります。
デンマークのシリーズはヨーロッパでは数少ない年齢制限のあるカテゴリーで、
Jujuは当時年齢が低いながらもレースにおける大事な経験を積むことができました。
初戦で初ポールポジション、初優勝というセンセーショナルなデビューをしたJujuは
その後も3回のポールポジション、4回の表彰台を獲得して、デンマークF4でのルーキーイヤーを成功させました。
「デンマークF4は、私にとってヨーロッパでの初めてのレース経験で、渡欧する前は少し緊張していました。でも、いざ始めてみるとかなりうまくいきました。期待していたように本当にうまくいったと思います。」ーJuju
レースに関してはとてもうまく事が運んだようでしたが、一方で難しかったこともあったようです。
「とはいえ言葉の問題をはじめ、難しかったことにもいくつか直面しました。」ーJuju
この若き日本人女性レーサーは、2021年にF4アメリカ選手権への参戦を予定していました。
しかしその初戦のフリー走行でトップタイムを刻んだ後、その場で選手権への参戦をとりやめるというハプニングが発生したのです。
そしてその後JujuはデンマークF4に復帰することを発表したのです。

急遽参戦することになった2年目のデンマークF4の17レースで、Jujuは何度かの表彰台と2勝を挙げたが、メカニカルな問題にも直面したために1年目の成功したシーズンと比べると良い戦績とはいかなかった。(※実際は2年目のデンマークF4は未勝利で終わっている)
「特に昨年(2021年)はメカニカルトラブルが多く発生してしまってまともに走れないレースもありました」
「とても難しい年でした。それでも速さは見せられたと思うので、次のステップに期待しています」。
「シーズンオフには心身ともに鍛えるために多くのトレーニングを行いました。日本でのテストプログラムもこなしました。」ーJuju
Wシリーズの評価テストに見事合格
2021年の冬、次のステップに進むための準備としてJujuはF3リージョナルカーでトレーニングを開始。さらに日本だけでなくヨーロッパでもテストに参加して着々と準備を進めていった。
その一方で、女性だけのシングルシーター選手権「Wシリーズ」は、アリゾナ州インデモータースポーツランチで行われた2022年のルーキードライバー評価テストに16人のドライバーを招待したが、そこにJujuの名前はありませんでした。
JujuがWシリーズのルーキー候補にノミネートされたのはバルセロナのカタルーニャサーキットで行われた2回目の評価テスト前でした。
Wシリーズのテストに参加するのも、スペインのサーキットを走るのも初めてのJujuでしたが、
Wシリーズのレーシングディレクターであるデイブ・ライアンの目に止まり、
JujuのWシリーズ・アカデミーチームへの参加が決定したのです。
「私は長くレースをしていますが、いつも男子とレースをしていました。Wシリーズのように女性同士で争うレースというのはとても新鮮で、また刺激になります。」
「WシリーズもFIAも女性ドライバーを支援しようとしてくれていて、レースドライバーとしての未来を考えている私たちにとってはとても良い環境です。以前、オンラインでWシリーズのレースを見たことがあるのですが、女性同士のレースにもとても興味が惹かれました。」ーJuju
フォーミュラ・リージョナルで走行経験したにもかかわらず、Wシリーズで使用されるマシンとは大きなな違いがいくつかあるので、他のルーキーたちと条件は同じだと強調します。

「リージョナルを走らせた経験は役に立ちましたが、エンジンも異なりますし、タイヤもまったく違います。だからWシリーズのテストでバルセロナに来たときは、私にとってすべてが新しかったのです。ただクルマに慣れるために走行距離を稼いだだけです。」ーJuju
鈴鹿でJujuの走りが見れる
Wシリーズに参戦する日本人ドライバーは小山美姫に続いて2人目。
そしてアジア人としては3人目となります。
キャサリン・ボンド・ミュアー(WシリーズCEO)によるWシリーズプロジェクトの拡大のおかげで、Jujuは母国日本でレースをする機会が生まれたのです。
Jujuはビアンカ・ブスタマンテとともに、Wシリーズに2年間参加できる未来のスターを育成するチームに参加します。ネレア・マルティとイリーナ・シドルコワの後任となります。
この2年間という計画に関してJujuは
「確かにプレッシャーからは解放されます。私は今アカデミーチームにいて、もし1年目がうまくいけば、次の1年はもっと良い経験を積めます。1年だけの契約に比べればよりリラックスして臨むことができます。」ーJuju
JujuはWシリーズへの参加と並行してヨーロッパでのレース参加も計画していて、より多くのレースをこなすことで次のステップに繋げようと考えています。
「Wシリーズを中心に活動していく予定です。昨年は年齢制限があるカテゴリーもありました。今は16歳になり、F3マシンをドライブすることも、大きなサーキットでレースをすることもできます。思う存分走れるように頑張りたい。」ーJuju
Jujuの2022年はイタリア モンツァから

Jujuは2週間前、日本のメカニックたちとイタリアのモンツァに行き、オーストリアのドレクスラーF3オープンカップにデビューしました。
このシリーズはさまざまな時代のフォーミュラカーが参加するもので、
スピードの神殿と呼ばれているモンツァサーキットには40台以上にもなるエントリーがありました。
日本の新進気鋭のレーサーはイタリアにあるこの有名なレース会場を訪れたのです。
Jujuの予選でのアクシデントはメカニックに大きなプレッシャーを与えることになりましたが、
JujuのマシンであるタトゥースT318はチームワークの力でJujuの最初のレースに間に合わせることができました。
「予選はアンラッキーでしたが、メカニックが懸命にクルマを直してくれました」ーJuju
と彼女は総括します。
「グリッドが後ろだったにもかかわらず、そしてマシンが良い状態ではないにもかかわらず、レースに出ることにしました。」ーJuju
Jujuは第2レースで後方から11位でフィニッシュし、なんと20以上のポジションアップを果たしました。
「とても落ち着いていて、リラックスしていました。自分のやるべきことに集中し、やるべきことはすべてやれたと思います」ーJuju
と彼女は振り返ります。
「スタートグリッドを考えると、これほど上位でゴールできるとは思っていませんでした。だからこの結果には満足しています。」ーJuju
私はレースが大好き どこでレースをしてもハッピー
Wシリーズに出場するJujuには、初年度とはいえ必然的に大きな期待がかかります。
幼い頃から神童と呼ばれたJujuは、多くのファンやフォロワー、そしてJujuの失敗を期待する人たちまで含めた世界中の人々から注目されていています。若い16歳の少女には巨大なプレッシャーがかかっているはずです。しかし、Jujuは普通の16歳とは違います。
プレッシャーは感じていない、とJujuは言います。
「応援してくれる人がいて本当に感謝しています。皆さんの応援が本当に嬉しいです。」ーJuju

海外のモータースポーツ転戦は、日本国内のそれよりも極めて激しい競争の連続である。
そこに身を置くということはJujuにとって新しい文化だけでなく、レース技術を学ぶという意味においてさらなるチャレンジとなりました。
「日本とは全然違うんです。人の考え方も違うし、コミュニケーションの取り方も全然違います。もっと直接的に人と接し、直接言いたいことを言わなければなりません。」
「日本ではそういうことありません。日本で自分の考えを伝えて理解してもらうためには、特には頑固にならなければならないこともあります。文化的にそこは難しいところですね。」
「日本で海外でのやり方と同じことをしたら嫌われてしまうこともあるでしょう。」
「でもモータースポーツの場では、何も言わずにただ待っているだけでは、欲しいものが手に入らないこともあるんです。」ーJuju
今週末、JujuはマイアミのストリートでWシリーズデビューを果たします。
Jujuはストリートサーキットは初めてで、これまで同僚たちと同じようにシミュレーターで練習してきました。
「シミュレーターで練習したんですけど、難しいですね。こんなに壁が近いところでは走ったことがないから簡単にはいかないと思います。」
「でも私はどのサーキットも好きなんです。どこでレースをしても気にしないし、ただ経験をたくさん積みたいと思っています。どこでレースをしても私はハッピーなんです!」ーJuju
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