
チェコ出身であるテレサ・バビコワは3姉妹の末っ子。
そして3姉妹が全員毎週カートで競い合うという間柄でした。
サーキットの外では仲の良い姉妹でも、バイザーを下ろした途端勝利することしか頭になかったのがテレサでした。
「カートのキャリアは私が7歳の時にスタートしました。最初は毎週日曜日に練習するだけで、どちらかというと趣味のように楽しんでいたんです。」
「でもそれからどんどんカートにのめり込んでいって、勝つためにレースをしてチェコ選手権にも参戦するようになったんです。」ーテレザ・バビコワ
もともとバビコワの父親は免許を取ったら常識的なドライバーになる規律を身につけるためにテレサにカートを許可していたといいます。
それがテレサの人生にとってとても大きなものになるとは思ってもいなかったでしょう。
「モータースポーツに一度挑戦したらもう元に戻ることはできませんでした。」
「両親も私の参加するレースはすべて一緒に行ってくれた。私たち家族全員にとって、モータースポーツはとても大きな情熱になったし、家族全員がそれを楽しんでいるんです。」ーテレザ・バビコワ
ロータックス・マックス・チャレンジ グランドファイナルで惜しくも女性初の優勝ならず

オーストリアのROTAX(ロータックス)社が開催しているワンメイクレースが『Rotax MAX Challenge:RMC(ロータックス・マックスチャレンジ)』であり、ROTAX社が制定する世界統一規則で行なわれるカートレースです。
1999年から始まったこのレースは今や50カ国以上でシリーズが開催されている世界屈指の人気カートレースシリーズとなっています。
ちなみにマックスチャレンジは日本でも最も人気の高いレースのひとつとなっていて、
現在は北海道から九州までの各地でシリーズが実施されています。
ロータックス・マックス・チャレンジ グランドファイナルは、
世界各地で繰り広げられてきたロータックス・マックス・チャレンジを勝ち抜いてきたドライバーたちがMAX世界一を目指す大会。
バビコワは、バーレーンで行われた2021年のグランドファイナルのシニアマックス・クラスにおいて、あとほんの少しで女性ドライバー初の優勝を手にするところでしたが、ペナルティを受けたため4位でのゴールとなりました。
しかしバーレーンから帰国したバビコワを待っていたのはWシリーズからのアリゾナテストの招待でした。見ている人はちゃんと見ていたのです。
F4マシンに乗ったことすらないバビコワでしたが、そんなことにまったく臆することなくアメリカへ飛び立ったのでした。
「アリゾナには、私よりずっと経験豊富な人たちが来ていると知っていたから、テストがどうなることかと思った。」ーテレザ・バビコワ
Wシリーズのセッションが進むにつれてどんどんと才能を露わにしていったというバビコワ。
その体験をとても楽しむことができたといいます。

楽しめたおかげか、アリゾナのテストは合格。次に行われたバルセロナのテストにも合格し、見事Wシリーズのドライバーとして選出されました。
「テストでは1周目、荷重の移動とその移動の速さを理解しておらず、すぐにスピンしてしまいました。
「カートレースではあまり考えたことがなかったのですが、ブレーキングの仕方について考えなければなりません。クルマのダウンフォース量を考え、どうブレーキングを良くするか、そして最も効率的なブレーキングがどういうものかを考える必要があるのです。」ーテレザ・バビコワ
しかし、シングルシーターのフォーミュラを走らせたこともなかったのにWシリーズのダオライバーに選ばれたのは、バビコワの持つ才能以外の何者でもありません。
バビコワはこれまでのカートレースで行ってきたハードワークが報われることを常に願っていました。
「私がこれまでしてきたようなことを達成できる女性は、これまでもいなかったし、これからもそう多くはないでしょう。しかしWシリーズは、レースに参加するための資金問題も解消してくれ、モータースポーツ界で女性が一段高いレベルで活躍するための素晴らしいプラットフォームです。私たちにとって素晴らしい機会なのです。」ーテレザ・バビコワ
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